ビルクリーニング業界において深刻化する人手不足の切り札として、注目を集める「特定技能」外国人。無事に採用が決まると一安心したくなりますが、本当のスタートはここからです。
特定技能外国人を受け入れた企業(所属機関)には、出入国在留管理庁(入管)に対して様々な「届出義務」と、外国人登録者が安心して働けるようにするための「支援計画の実施」が法律で義務付けられています。
これらを怠ると、指導の対象になったり、最悪の場合は今後の外国人受け入れができなくなったりするリスクもあります。本記事では、ビルクリーニング業の受け入れ企業が押さえるべき「採用後の義務」を分かりやすく解説します。
1. 必ず行うべき「4つの定期届出」と「随時届出」
特定技能制度では、外国人登録者の就労状況や企業の経営状態に変化がないかを国に報告する必要があります。届出には、定期的に出すものと、トラブルや変更があった際にその都度出すものがあります。
① 定期届出(四半期に一度)
毎四半期(4月、7月、10月、1月)の翌月14日までに、以下の3点を管轄の入管へ提出する必要があります。
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受入れ状況等出届出書: 外国人の氏名や在留資格、稼働日数などを報告します。
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支援実施状況出届出書: 登録支援機関に委託している場合も含め、支援計画が適切に行われたかを報告します。
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活動状況出届出書: 報酬(給与)の支払い状況や、社会保険の加入状況などを証明する書類を添付して報告します。
② 随時届出(トラブルや変更があった場合)
以下のような事象が発生した場合は、発生から14日以内に随時届出を行う必要があります。
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特定技能雇用契約を変更・終了(退職など)した場合
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支援計画を変更した場合(登録支援機関を変更した場合など)
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企業側(所属機関)の名称、所在地、代表者などに変更があった場合
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受入れが困難になるような重大な問題(経営悪化や不正行為など)が発生した場合
2. 義務付けられている「10項目の支援計画」
特定技能1号の外国人に対しては、日常生活や業務に支障が出ないよう、企業側が以下の「10項目の支援」を行うことが義務付けられています。
【注意】 ビルクリーニング業の場合、これらの支援を自社で全て行う(自社支援)ことも可能ですが、実績や言語対応のハードルが高いため、多くの企業が**「登録支援機関」**に委託しています。
| 支援項目 | 具体的な内容 |
| 1. 事前ガイダンス | 雇用契約締結後、入国(または在留資格変更)前に、労働条件や入国手続きについて3時間以上説明する(対面またはオンライン)。 |
| 2. 出入国時の送迎 | 入国時は空港から事業所(または自宅)まで、帰国時は空港の保安検査場まで見送りを行う。 |
| 3. 住居確保・生活インフラ契約支援 | 賃貸契約の連帯保証人になる、銀行口座や携帯電話、電気・ガスの契約に同行して手続きを補助する。 |
| 4. 生活オリエンテーション | 日本での日本のルールやマナー(ゴミの出し方、交通ルール、防災対策、医療機関の利用方法など)を8時間以上かけて説明する。 |
| 5. 公的手続き等への同行 | 住居地を管轄する市区町村役場への住民登録、マイナンバーカードの手続き、税金関係の手続き等に同行する。 |
| 6. 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室やオンライン教材の紹介、学習のための情報提供を行う。 |
| 7. 相談・苦情への対応 | 職業生活や日常生活に関する相談・苦情に、外国人が十分に理解できる言語(母国語など)で対応する。 |
| 8. 日本人との交流促進 | 地域社会の行事(お祭りや防災訓練)や、社内イベント(懇親会など)への参加をサポートする。 |
| 9. 転職支援(人員整理等の場合) | 企業側の都合で契約解除せざるを得なくなった場合、次の就職先を探す手伝いや、有給休暇の付与、推薦状の作成などを行う。 |
| 10. 定期的な面談・行政機関への通報 | 3ヶ月に1回以上、外国人とその上司(支援責任者)が面談を行い、労働基準法違反などがないかを確認する。 |
3. ビルクリーニング業特有の注意点
ビルクリーニング業で特定技能外国人を受け入れる場合、他業種にはない特有の注意点があります。
現場(清掃場所)が変動することへの配慮
ビルクリーニングの仕事は、契約している複数のビルや商業施設を巡回したり、現場が定期的に変わったりすることが一般的です。
そのため、「生活オリエンテーション」や「送迎・通勤サポート」の際には、外国人スタッフが迷わず安全に現場に通勤できるよう、より丁寧な経路説明やフォローが必要になります。
孤立を防ぐ定期面談
現場によっては、少人数(あるいは1人)で清掃作業を行う時間帯もあります。コミュニケーションの機会が減ると、不安や不満を抱え込みやすくなります。3ヶ月に1回の定期面談はもちろん、日頃からSNSなどを活用してこまめに体調やメンタルのケアを行うことが、早期離職を防ぐ鍵となります。
まとめ:適切な運用が、優秀な人材の定着につながる
特定技能外国人の採用後は、公的な手続き(届出)と、人間的なサポート(支援計画)の両輪を正しく回していくことが求められます。
「手続きが複雑で自社だけでは不安」「言語の壁があって10項目の支援を全うできない」という場合は、信頼できる登録支援機関へ外部委託することを強くおすすめします。
法令を遵守し、外国人スタッフが安心して働ける環境を整えることこそが、ビルクリーニング現場の生産性向上と、長期的な人材定着への一番の近道です。
