近年、ビルクリーニング業界では慢性的な人手不足に伴い、「特定技能」をはじめとする外国人材の活用が急速に進んでいます。しかし、原価の上昇や人件費の高騰が続くなか、請負価格へ適切に反映(価格転嫁)できず、外国人材の適切な処遇確保や労働環境の整備に懸念が生じています。
こうした課題を解決するため、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が定めたのが「ビルメンテナンス業における価格転嫁に向けた自主行動計画」です。
なぜ特定技能外国人への「価格転嫁」が必要なのか?
特定技能制度では、外国人労働者に対して「日本人と同等以上の報酬」を支払うことが法律上義務付けられています。さらに、募集・採用にかかる費用や、登録支援機関へのサポート委託費、生活支援コストなど、受け入れ企業側には各種の運用コストが発生します。
ビルメンテナンス業界は労働集約的であり、原価に占める人件費の割合が非常に高い特徴があります。最低賃金の引き上げや物価高騰に伴うコスト増を元請け・発注者(クライアント)との契約価格に転嫁できない状態が続くと、外国人材への適正な賃金還元や、継続的な教育・安全支援が困難になってしまいます。
自主行動計画における「適正価格契約」の主要ポイント
自主行動計画では、発注者との健全な取引関係を築き、持続可能な雇用環境を守るための具体的な指針が示されています。
- 労務費・人件費アップの価格転嫁 最低賃金の改定や各種諸手当の増加に伴い、単なる労務費だけでなく外国人材の支援コスト(講習費、登録支援機関委託費など)を含めた適切な見積りを提示し、価格改定の協議を行うこと。
- 見積り根拠の透明化 人件費、資機材費、安全管理費、各種支援費用などの内訳を明示し、発注者に対して合理的かつ透明性の高い根拠をもって価格交渉を進めること。
- 定期的な契約内容の見直し 長期間の据え置き価格を避け、最低賃金改定や物価変動のタイミングに合わせて、定期的に発注者と契約対価の見直し・協議を実施すること。
受け入れ企業が取るべき具体的アプローチ
ビルクリーニング事業者が特定技能外国人材を安定して確保し、自社の経営基盤を強固にするためには、受動的な姿勢を改め、主発的に発注者へ働きかけることが重要です。
- コスト構造の可視化 外国人材受入れにかかる初期コスト・運用コストを正確に算出・整理する。
- 自主行動計画を活用した交渉 業界全体の指針(自主行動計画)や政府の価格転嫁ガイドラインを根拠資料として発注者へ提示し、交渉の納得感を高める。
- 現場の質の向上と価値提案 特定技能外国人への教育体制を整えて作業品質を維持・向上させ、単なる「コスト」ではなく「価値の提供」として発注者に評価してもらう。
適正な契約価格の実現は、特定技能外国人の処遇改善だけでなく、自社の事業継続や業界全体の発展に直結します。自主行動計画を踏まえ、発注者とのパートナーシップのもとで価格適正化に取り組みましょう。
