近年、ビルクリーニング業界では深刻な人手不足に対応するため、「特定技能制度」を活用した外国人材の受け入れが急速に進んでいます。その一方で、国の施策として中小企業の受注機会を確保するための「中小企業者に関する国等の契約の基本方針(以下、基本方針)」が毎年閣議決定されています。
「特定技能外国人の雇用推進」と「国や地方自治体等からの官公需(公的案件)の受注拡大」は、中小のビルクリーニング事業者にとって事業拡大・経営安定化を支える非常に重要なテーマです。
本記事では、ビルクリーニング事業者様に向けて、特定技能外国人制度の概要と、中小企業向けの国等契約基本方針のポイント、そして両者を組み合わせた活用戦略について分かりやすく解説します。
1. ビルクリーニング業における「特定技能外国人」制度とは?
特定技能制度は、国内で人材を確保することが困難な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れる制度です。ビルクリーニング業は、この特定技能の対象12分野(※区分改定等により増減・再編あり)の一つに指定されています。
- 対象となる主な業務
- 建築物内部の清掃(床、壁、窓、天井、衛生設備等の日常清掃および定期清掃)
- 環境衛生維持管理のための作業
- 主な受け入れ要件
- 「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」および「日本語能力試験(N4以上など)」への合格(または技能実習2号を良好に修了していること)
- 適切な賃金水準の確保や、生活面・業務面での登録支援機関等によるサポート体制の整備
外国人材を適切に受け入れることで、ビルメンテナンス現場での人手不足解消だけでなく、業務の標準化や若い世代の活力を組織に取り入れる効果が期待できます。
2. 「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」とは?
「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」とは、官公需法(官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律)に基づき、国や独立行政法人などが毎年度定めている調達方針です。
基本方針の主なポイント:
- 中小企業・小規模事業者向け目標設定 国等の契約において、中小企業者向けの発注目標割合を設定し、中小企業の受注機会の拡大を図ります。
- 適切な納期と適正な価格(人件費上昇の反映) 近年特に重視されているのが、最低賃金の引上げや物価高騰、社会保険料の負担を踏まえた適正な契約価格・予定価格の設定です。無理な安値叩きを防ぎ、事業者が適切な賃金支払を行える環境を整えています。
- 総合評価落札方式等における評価項目の配慮 価格だけでなく、事業者の取り組み(ワーク・ライフ・バランス推進や賃上げ、適切な雇用環境の整備など)を評価する仕組みが導入・強化されています。
3. ビルクリーニング事業者が知っておくべき「受入×官公需」活用ポイント
では、特定技能外国人の雇用と、国の契約基本方針はどのように関係してくるのでしょうか?ビルクリーニング企業が意識すべき主なポイントは以下の通りです。
① 人件費や受け入れコストを考慮した適正価格での入札
国の基本方針では、「労務費(人件費)や各種コストの上昇を適切に反映させること」が明記されています。特定技能外国人を雇用する場合、日本人と同等以上の報酬を支払う義務があり、渡航費や支援委託費などのコストも発生します。基本方針の趣旨に沿い、適切なコストを盛り込んだ積算と入札を行うことが重要です。
② 官公需案件の履行体制・人手不足の解消
国や自治体の施設(庁舎、学校、病院等)の清掃業務を受注しても、作業員が不足して履行不能になっては元も子もありません。特定技能外国人を受け入れることで安定した履行体制を構築でき、発注者からの信頼度向上につながります。
③ 雇用環境・法令遵守(コンプライアンス)の徹底
国の契約において、法令遵守は必須です。特定技能制度では出入国在留管理庁への定期的な報告義務や、労働基準法・安全衛生法の厳格な適用が求められます。適切な雇用管理を行っている企業は、官公需の案件においても高い評価と信頼を得ることができます。
まとめ
ビルクリーニング業界において、特定技能外国人の活用は「人材不足の解決策」にとどまらず、安定した現場運用と事業拡大を実現するための強力な一手となります。
また、「中小企業者に関する国等の契約の基本方針」を理解し、賃上げやコスト上昇分を適正に反映させた価格で官公需案件へチャレンジすることは、健全な会社経営に直結します。
人手不足に悩むビルクリーニング事業者様は、制度を正しく理解・活用し、持続可能な経営体制と官公需での受注チャンスの双方を追求していきましょう。
